債務整理が勢揃い
高業績企業の中には、退職給与規程に特別加算金や付加金の制度を設け、引当金計上額を増やしている例もあります。
しかし、退職給与引当金の計上率は、昭和五五年を境に引き下げられており、今後もその傾向が続くでしょう。
中途退職者(自己都合退職者)への退職金は低く抑えても、定年退職者には、会社への貢献に報いるためにも十分な退職金を支給したいと考える会社も多いことでしょう。
こうした会社の要望にもこたえ、さらに節税メリットもあわせもっているのが、定年退職者を対象とした適格退職年金制度です。
年金の掛金は損金となる=適格退職年金や、中小企業退職金共済制度への年金掛金は、実際支払額を損金算入できます。
そこで、一年分一括払すれば、従業員数が多い会社はかなりの金額を損金算入できます。
また、保険会社や信託銀行の計算になりますが、掛け金についても退職者の多い会社の場合は高くなるでしょう。
退職給与引当金に手をつけなくてすむ=現在、退職給与引当金を計上している会社は、引当金以外に適格退職年金を設定すると、通常、年金から支給される金額を、引当金の計算からマイナスして計上しなくてはなりません。
したがって、せっかく年金で損金計上額を増やしても退職給与引当金の計上額が減ってしまうことになり妙味がありません。
ところが定年退職者だけを対象とすれば問題は解決します。
退職給与引当金はすべて自己都合退職(退職者の個人的事情による中途退職)を前提としているため、定年退職者だけの年金とは競合することがないからです。
新しく退職金制度を導入しようとする際、いつも頭を悩ますのが「過去勤務債務」の扱いです。
これは、制度の開始前からすでに勤務している人について「引当金」や「年金」でカバーされてないが、将来、確実に支払うべき債務です。
この過去勤務債務費用を、会社の好況時に、それも早いうちに損金処理できれば大変な節税になります。
この点について退職給与引当金と適格退職年金とを比較してみましょう。
退職給与引当金の場合=最後まで過去勤務債務コストを引当計上できません。
前期末要支給額がゼ口ではなく、新規定が前期末に適用されたと仮定して計算した金額を使うため、あくまで当年一年分しか計上できないしくみとなっています。
将来退職したときは当期以前の勤務期間についても退職金を支給するにもかかわらず、引当金の計算から除外されていることに注意してください。
適格退職年金の場合=過去勤務債務費用は、年間の償却額が過去勤務債務総額の二〇%以下で定額償却、過去勤務債務の現在額(来償却残)の三〇%以下の定率償却、のいずれかの方法で損金算入できます。
なお製造部門の従業員の過去勤務費用については、製品原価に含めることに注意してください。
以上みてきたように、現金支出が伴うという難点があるとはいえ、適格退職年金のほうが退職給与引当金より有利です。
本来、退職金は従業員が退職して初めて税務上も損金算入が認められるものです。
しかし、従業員(役員)として在籍したまま退職金が支払われるケースがあります。
これを退職金の「打ち切り支給」と呼んでいます。
これは金額が大きいことから節税効果はありますが、会社にとっては資金負担を伴うのが欠点です。
受け取るほうは喜ぶ場合が多いでしょう。
主なケースとしては次の八つがあります。
定年延長した場合、新たに退職規定を作った場合、適格退職年金制度や中小企業退職金共済制度へ移行した場合、従業員が準役員待遇の「参事」に昇格した場合、従業員が使用人兼務役員(たとえば取締役営業部長)に昇格した場合、使用人兼務役員が役員に昇格した場合、子会社等に転籍した場合、役員の職務分掌変更した場合。
法人税法の取り扱いでは、定年延長など退職金を打ち切り支給する合理的理由(本人の都合ではなく会社の都合であること)があり、実際に現金支出がなされた場合(未払計上は原則否認される)に限って、損金算入が認められます。
また、打ち切り支給後の勤務に対して退職金を支給する際には、打ち切り支給前の勤続年数を含めることはできません。
それでは、いくつかの注意点をひろってみましょう。
従業員が参事に昇格した場合の「参事」とは、会社によって呼称は異なりますが、取締役候補者や取締役待遇の地位を示しています。
しかし、参事はあくまで従業員であり、取締役ではないので、たとえ打ち切り支給しても、退職していないので退職金ではなく賞与と認定されます。
従業員から使用人兼務役員に昇格した場合には、会社は従業員分の退職給与を打ち切り支給することも、役員退任時まで延ばすこともできます。
ただし損金計上されるためには、支給は使用人兼務役員昇格時点に限ること、現金支出することが必須条件です。
なお、昇格時点で、退職給与引当金の計上はストップします。
使用人兼務役員から役付取締役に昇格した場合、使用人兼務役員といっても法律的には使用人としての地位は継続していると考えられることから、会社が使用人分の退職金を支給したいと考えるのは当然といえます。
しかし、法人税の考え方は使用人兼務役員も役員であり、役員分掌変更の条件を満たさないかぎり、単なる役員間の異動とみます。
したがって、退職給与ではなく役員賞与とされます。
親会社は従業員を子会社に転籍させて退職金を支払った場合、損金計上ができます。
なお退職金の支払方法としては、従業員に支払ってもかまいませんが、子会社に支払うのが一般的です。
親会社が退職金を子会社に支払った場合、親会社に退職給与引当金がなければ支給額は全額損金算入され、一方、子会社は入金額全額が益金となります。
このままでは親会社が節税しても、子会社でその分税金を支払うことになります。
親会社子会社の両面の税金対策が必要となります。
未払費用の計上は、文字どおり現金の支出を伴わずに費用を計上し節税できる点に特徴があります。
法人税法で、販売費、一般管理費が損金として認められるためには、減価償却費や引当金を除くと、「債務確定性」が必要条件です。
一般の会社での賃金・給与の支払いは、二〇日締切で二五日払いが多いと思われます。
そして通常、賃金・給与を費用に計上する時点は、この支払日を基準としています。
この方法の場合、締切日の翌日から月末までの一〇日間について労務の提供を受けているのに、翌月の二五日まで費用計上されないことになっています。
これを決算年度でみると、決算月の二〇日から三〇日の一〇日間分ということになります。
たとえ一〇日間でも、月額賃金給料の三分の一は、会社の規模が大きくなれば、かなりの節税となります。
注意点としては、給与支給規定に賃金・給料の計算期間を明示しておくこと、また二〇日以降退職した者については、日割で支給しておくことなどがあります。
なお、役員報酬については日割りによる未払計上はできません。
業績良好な会社が利益減らしのために従業員期末(臨時)賞与を未払計上したけれども税務調査で否認されるケースがありますが、その多くは、会社の損益管理が不十分なため税務対策が後手にまわり、現金支給もできないまま見積計算で計上されている場合でしょう。
元来、従業員賞与は、賃金・給料の後払的性格と同時に、利益の分配といった側面をもっています。
特に臨時賞与となると利益分配の性格が強く、債務確定の条件としては、臨時賞与の辞令等が期末日までに個々の従業員に通知されていることが必要となります。
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